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とんかつを揚げろ!フロアをアゲろ!

とんかつDJアゲ太郎がおもしろい。少年ジャンプ+で連載中で、渋谷のとんかつ屋の三代目息子がヒップホップDJを目指すという異色のギャグ漫画である。

キャベツの千切りを刻むリズムとヒップホップのBPMが一緒だとか、とんかつの揚げ具合を油のプチプチ音で判断するのとDJがヘッドホンで次の曲の頭出しを確認しているのは同じだとか、とんかつを揚げる前に固い肉を叩いてほぐすのとフロアのカタい客をゆるめの曲でほぐすのは揚げる=アゲル前に必要だとか、とんかつとDJをこじつける強引さがたまらない。コミックには、女性DJとしてキャリアのあるDJ Yummyのクラブカルチャー入門も掲載されており、DJやクラブをあまりよく知らない人には役立つと思う。

 

テーマ的には大人向けのギャグ漫画だが、少年漫画の王道はしっかりおさえている。とんかつ屋の父と伝説のヒップホップDJという二人の師匠、人気のテクノ・ハウスDJでIT企業の社長でもあるイケメンのライバル、スタイリスト見習いの可愛いヒロイン、EDMを回す韓国人DJ、読者モデル女子DJユニット、ワルなヒップホップDJなどの同志、地元商店街の幼馴染などのキャラクターたちとともに、時には挫折し、成長していく主人公の姿は、少年漫画特有の“熱”で満ちている。

 

何より、DJをやっていた身としては、「そうだよな」と同意したくなるエピソードも多い。僕が印象に残ったのは、とんかつ屋がソースを丁寧に作ることで熟成されたオリジナルの味ができるように、DJもレコードをいっぱい聴くなかで自分の個性を磨いていくというエピソード。僕はネオアコマンチェスターなどのUKインディーズから始め、アシッド・ジャズに鞍替えし、フリーソウルにはまるという典型的な渋谷系DJ(?)だったのだが、まがりなりにも自分の個性を出せるようになったのは、ブラジルものを発掘してからだった。当時はブラジルものだとAirto MoreiraのTombo 7/4やAlive!のSkindo Le Leなどのサンバが人気だったが、ソウルとミックスするにはBPMが違いすぎる。僕が目を付けたのがJorge BenやWilson Simonalなどのソウル/ファンキーなブラジルのアーティストで、これを発見したことで初めて自分のDJスタイルが確立できたような気分を味わえた。

 

こんな話をしつつ妻に「面白いよ、この漫画」と渡したら、「どうせ、とんかつが好きだから、この漫画気に入ったんでしょ」とあっさり言われた。僕はとんかつが大好物で、妻に「バレンタインデーのディナーは好きなものおごってあげる」と言われた時に、「上ロースかつがいい」と本気で答え、呆れられたことがある。

 

 

とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックス)

とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックス)

 

 

とんかつDJアゲ太郎 2 (ジャンプコミックス)

とんかつDJアゲ太郎 2 (ジャンプコミックス)