1月27日(土) 四ッ谷のBar DoctorHeadの人気イベント「Bar薫る」にまたお招き頂きDJしてきました。今回主催者あーるさんから頂いたお題は「冬にきく渋谷系とか」。冬というと普段はブルース・コバーンとか長谷川きよしとか音数の少ないフォークを好んで聴くのですが、DJで回す曲は正直考えたことはありませんでした。冬ソングとは?と部屋に散らばったレコード/CDをひっくり返した結果、安易ではありますが単純に歌詞に冬が出てくるものにしようと決めましたがそれだけではそれこそ寒い選曲になりかねないので、冬の寒さから春の暖かさへと季節の移ろいを感じられる「冬来りなば春遠からじ」をテーマにしました。
ちなみに「冬来りなば春遠からじ」という言葉は、「厳しい冬がやって来たならば、次には暖かな春がついそこまで来ている。どんなに現在が不遇であっても、その先には明るい希望の日々が待っているというたとえ。イギリスの叙情詩人シェリーの「西風に寄せる歌」の末節にある句」ですが、私が知ったのは松本大洋の漫画「花男」でした。私の脳はまあまあの漫画脳なのです。
相変わらず前置きが長くなりましたが、以下が選曲リストと駄文です(Spotifyには夏木マリの「かもめ」はなかったので代わりに港町つなぎで「港のマリー」を選曲しておきました)。
https://open.spotify.com/playlist/45MfcWv9QBhOkfaigCMEux?si=eZeeXyASTh6uKSe5l0qGLQ
●ひとりで眠ることを学ぶ。/ピチカート・ワン
1分もない短い打ち込みのインストですが、「冬にきく渋谷系とか」がテーマといわれ真っ先に思い出したのがこのジャケットでした。DJで使える曲はないですが冬の寒い日にひとりで聴くにはもってこいの私の冬アルバムです。先日収録曲の「イマジン」のカヴァーでヴォーカルを務めたマリーナ・ショウが亡くなり、彼女の追悼の意も込めました。
●メッセージ・ソング/ピチカート・ワン
ピチカート・ファイヴのオリジナル・ヴァージョンはゲストの花田裕之がギターを弾きまくるロック調ですが、今回はピチカート・ワンのジャズ調のライブ・ヴァージョンを選びました。初めて聴いた時は歌詞でなぜ「いつか大人になる日に君もたぶんどこかへ旅に出るはず」と出てくるのかわからず、後にインタビューで「離婚した娘へのメッセージ・ソング」だったと読んだのですが、この曲を「みんなのうた」に選んだNHKのプロデューサーさんは知っていたんでしょうか。
●かもめ/夏木マリ
小西康陽プロデュース夏木マリは本当に大好きで今回も選曲しました。原曲は浅川マキで歌詞は寺山修司です。歌詞に冬という言葉は出てきませんが、かもめは冬の鳥ですし港町の阿婆擦れ女に恋した男の身勝手な哀しい顛末を飄々と歌う夏木マリさんはまさに女優です。
●女港町/畠山美由紀
港町つなぎで畠山美由紀による八代亜紀のカヴァーです。八代亜紀の追悼の意もありましたが、畠山美由紀は渋谷系の文脈では語られないものの彼女のユニットPort of Notesは瀧見憲司のクルーエル・レコードからデビューしてますし、ソロになってからも堀込康行・ハナレグミとの「真冬物語」(作詞:松本隆)、Free TempoやSugiuramnのフィーチャーリング・ヴォーカルなど幅広く活動する実力者のわりにはクラブでかかることが少ないと感じたので選びました。
「冬にきく渋谷系とか」がテーマならやはり渋谷系の女王・野宮真貴は欠かせません。原曲は「Baby, It's Cold Outside」というクリスマスのスタンダード曲で、今回かけた日本語歌詞は田島貴男もリスペクトする日本のスウィング・ジャンプ・ブルースバンド吾妻光良&スウィンギン・バッパーズによるものです。寒い冬の夜のデートの後、帰ろうとする女性を男性が家に誘おうとするかけひきを歌ったコメディー・タッチの歌詞で毎年のようにビッグネームのアーティストによるデュエット・カヴァーがリリースされる人気曲でしたが、#MeTooムーブメントによって歌詞が不適切だとアメリカのとラジオ局に苦情が寄せられ放送禁止になるという騒動がありました。皆さんはこの曲を聴いてどう感じたでしょうか。
●指切り/矢舟テツロー
小西康陽、野宮真貴をかけたなら歌うジャズ・ピアニスト矢舟テツローもやはり欠かせません。大瀧詠一のファーストソロアルバム収録曲のカヴァーですがピチカート・ファイヴのセカンドアルバム「ベリッシマ」に収録される予定だったそうです(後にベストリミックスアルバム「月面軟着陸」に収録)。歌い出しが「きみはとても鋭い爪で蜜柑の皮をむいているけど」という歌詞のせいか、こたつで向き合う男女を歌った曲のような気がするのは大瀧詠一が東北の生まれだからでしょうか。
●冬へと走りだそう 再び/かせきさいだぁ
歌詞に冬が出てくる曲といえばこの曲があったと思い出し久しぶりに聴きたくなり選曲しました。歌詞に出てくる「セブンファイヴオーライダー」は漫画「750ライダー」が元ネタで、「委員長を乗せて」の「委員長」は漫画のヒロインのあだ名です。小学生の頃この漫画が大好きな同級生がいてバイクの免許をとって彼女と2ケツするのが夢でしたが、高校生になって免許取り立ての原チャリで事故りバイク嫌いになったこともついでに思い出しました。
そろそろ寒い冬から暖かい春をつげる曲をと選びました。主催者あーるさんから「小山田圭吾さんの誕生日なので関連曲を」というリクエストもありましたし、小山田圭吾が作曲したカヒミ・カリィではこの曲がいちばん好きです。
●Camera Full of Kisses 全ての言葉はさよなら/フリッパーズ・ギター
「雪が溶けて僕たちは春を知る」「思いっきり僕たちはキスを投げてさよならする さよならする さよならをする!」ということで。
●B2B
Raise Your Hand Together(320 light years mix)/Cornelius
小山田圭吾お誕生日おめでとうということで。
今回のBar薫るはSwinging Popsicle/Grenfelleの藤島美音子ちゃんがDJ、Swinging PopsicleのギターリストのしまっちさんがThe Carawayでソロライブ、というなかなかレアな組み合わせもあっていつも以上に盛り上がり楽しかったです。ただフロアの後ろでとはいえ無造作に着替えをするDJガンダムさんを目撃し、ヒーローショーの後に見てはいけないものを見てしまった子どものような気分になりました。
主催者のあーるさん、Bar Doctor Headのやなぎはらさん、DJの皆さん、The Carawayのしまっちさん、足を運んでくれたお客様の皆さん、私のDJが終わった後に駆け付けてくれた妻、ありがとうございました。またどこかでお逢いしましょう。