私たちの望むものは
生きる苦しみではなく
私たちの望むものは
生きる喜びなのだ
私たちの望むものは/岡林信康
緊急事態宣言が出されて三週間。僕は相変わらず出勤し、通勤時に音楽を聴き気に入ったものがあればツイートし、オンラインショップの職場に着いたら全国から届いたあらゆるジャンルの中古レコードやCDを黙々と査定し、帰宅時にまた音楽を聴き気に入ったものがあればツイートし、家に帰ったら妻が録画したマツコの知らない世界やアメトーークを見させながらと一緒に遅い夕飯を食べ、他愛のない会話をし、先にお風呂に入り寝る。
緊急事態時にほぼ変わらない日常を送れていることは、平常心を保つ上で大切なことだと改めて思う。もちろん休日の過ごし方は変わった。近所のスーパーに買い物に行ったり、馴染みの店でテイクアウトをするぐらいだ。TSUTAYAがあるが買いたいと思う雑誌も本も置いてないし、観たいレンタルDVDもない。ネット配信も家だと集中できず、他のことをしながらになりがちなのでほとんど見ない。オンラインショップで働いているくせにアマゾンもメルカリもウーバーイーツも利用しない生活をしてきたので、街へ出かけることができないのは苦痛になりつつある。
ニュースによると、政府は緊急事態宣言を全国対象に1ヵ月程度延長する方向で調整を進めているとのことだ。6月20日に開催延期となっていたレコードストアデイは「RSD DROP」として8月29日(土)、9月26日(土)、10月24日(土)に分散して開催されることになり、これまで制約されていたオンライン販売も今年に限り当日の13時に解禁されることになった。
私たちの望むものはものは
生きる喜びではなく
私たちの望むものは
生きる苦しみなのだ
「結局どっちなの? ただの欲しがりじゃん」
僕が部屋でかけていた岡林信康の「私たちの望むものは」に妻がツッコミを入れた。
今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ倖せに 今跳び立つのだ
外出自粛で「今跳び立つ」ことができない私たちの状況を示すかのように、岡林信康の歌声は「私たちの望むものは…」と繰り返しフェードアウトしていった。ただ、岡林信康はこの曲についてこう語っている。
「今まで外に噛みついてばかりいたけれど、自分の中にこそ噛みつかなければならないところがあるんではないか?そう考えたんです。」
今は答えのない「私たちの望むもの」を考える時間なのかもしれない。